公務員って退屈? そんな思い込みをくつがえす
「田舎で公務員なんて、つまらなそう…」
移住を考える多くの人が、そう感じるのではないでしょうか。安定しているけれど、前例主義で自由度がない──そんなイメージを抱かれがちです。
けれど実際に地方で働くと、公務員という立場だからこそ、町の未来を動かせる場面がたくさんあります。人口5,000人ほどの小さな町役場で12年間働いた私は、「安定」だけでは語れない、公務員ならではの面白さを実感しました。
- 移住後の仕事探しで「自分に合う選択肢が見つからない」と感じている人
- 移住するなら、地域と関わりながらやりがいを持てる仕事をしたいと考えている人
- 「公務員だけは自分には合わない」と思い、最初から選択肢から外している人
- 「公務員=堅苦しい」という常識を覆し、意外な楽しさに気づける
- 地域づくりや人とのつながりに、公務員という立場がフィットする驚きを得られる
- 公務員を“安定職”ではなく、“地域で夢中になれる選択肢”として捉え直せる
小さな町村役場の仕事は意外と多彩

公務員の仕事っていうと、住民票や印鑑証明を発行したり、申請手続きを受け付けたり…窓口業務くらいしかイメージがないんですよね。正直、移住先でわざわざ選ぶ仕事なのかな?って疑問に思っちゃいます。

普段の生活で一番身近なのは、やっぱり窓口業務をしている公務員ですよね。でも実際には、窓口は全体のほんの一部にすぎません。役場の仕事って、教育や福祉、まちづくりなど、幅広い分野で多様なんですよ。
| 部署名 | 仕事概要 | 紹介文 |
|---|---|---|
| 総務 | 人事、予算管理、議会対応 | 普段は見えにくいけれど、実は役場の“司令塔”。トラブル時に真っ先に動くのもこの課で、いざという時ほど存在感を放ちます。 |
| 企画 | まちづくり計画、地域振興プロジェクト | 「未来のまちのデザイナー」。新しい公園やイベントが突然出てきたら、その影には企画課のアイデアマンがいます。 |
| 税務 | 住民税・固定資産税の徴収、滞納整理 | 正直、積極的に会いたい課ではないかもしれません。でも道路や学校に欠かせない財源を集める、暮らしの“縁の下の力持ち”。 |
| 住民サービス | 戸籍、国保、年金、窓口業務 | 引っ越し・結婚・出産──人生の節目ごとに必ず登場する“まちの受付”。時に頼もしく、時に書類で悩ませる相棒です。 |
| 福祉 | 高齢者・子育て支援、障害者福祉 | 子育てや介護で大変なとき、頼りになるのが福祉課。暮らしに困ったときの“相談相手”として控えています。 |
| 産業 | 農林水産業の支援、観光振興、商工業政策 | 直売所の新鮮野菜や観光パンフレットの陰にいるのが産業課。地域を盛り上げる“地元応援団”です。 |
| 建設・土木 | 道路、公園、河川の整備や維持管理 | 道が通れるのも、公園で遊べるのも当たり前ではなく、この課のおかげ。文句は言われやすいけど、感謝されにくい“真の縁の下の力持ち”。 |
| 教育 | 小中学校の運営支援、施設整備 | 校舎の修繕や教材の手配など、子どもの学びを支える影の存在。先生ほど目立たないけれど、“未来を育てる黒子”です。 |
| 生涯学習 | 文化・スポーツ活動、公民館運営 | 休日のスポーツ大会や文化祭を仕掛ける“地域のエンタメ担当”。大人も子どもも楽しめる場を演出します。 |
都市部の役所では部署が細分化されていますが、地方では数人で担当するのが普通。その分、仕事の幅が広く、裁量も大きいのが魅力です。

例えば、私のいた役場では、産業分野に配置される職員は5~6名。
この人数で農林水産業や商工観光業の振興を担っています。
一人一人の裁量がいかに大きいか、イメージできるんじゃないでしょうか。
役場の仕事は“暮らしをつくる”仕事です

こうして見ると、本当に生活に密着した仕事ばかりなのがよくわかるね。
でも、こんなに幅広い仕事を任されるとなると、自分にはちょっと荷が重い気もしてきたわ。

確かに業務の幅は広いから、専門的な知識や経験が必要になる場面もあります。
でも、それ以上に地域に根ざした仕事ができるのが魅力なんです。知識やスキルは入ってからでも身につけられますよ。
田舎の役場の仕事は、日々の業務をこなすだけでは終わりません。
住民の声を聞き取り、一緒に考えながら「こんな取り組みがあれば暮らしがもっと良くなる」といったアイデアを少しずつ形にしていく――その積み重ねが、まちづくりにつながっていきます。
公務員の仕事は、決して派手ではないけれど、住民と一緒に地域の未来をデザインしていけるという点で、とてもクリエイティブな側面を持っているのです。

ここで、私自身の体験談を3つ紹介します。
12年間の経験のほんの一部に過ぎませんが、公務員の仕事の”クリエイティブ”な一面を少しでも感じて貰えたらうれしいです。
伝統作物を活かした新しい加工品づくり
1つ目は、農業振興に関わる業務のエピソードです。
農業振興担当の仕事は多岐にわたりますが、その分、農家や地域のお年寄りの声を直接聞く機会も多くあります。そんな中で、よく耳にしたのが「昔は蒟蒻で御殿が立ったんだ」という話でした。
衰退しつつある伝統作物を次の世代へつなぎたい――そうした町民の思いを形にするために、県の職員の協力を得ながら賛同者を募り、生産組織を立ち上げるプロジェクトを始めました。
当初は地元で流通できる程度の生産量を目指すものでしたが、とある蒟蒻屋さんから「一緒に新商品を開発したい」という声をいただいたことをきっかけに、取組は一気に加速しました。
完成した新しいこんにゃくは「所さんお届けモノです」でも紹介され、「小さな町の挑戦が大きな流れにつながる」という手応えを感じられる成果となりました。
新しいイベントの立ち上げ、運営
2つ目は、産業振興に関わる業務のエピソードです。
産業振興担当は、商工業者や観光関係者、誘致企業の責任者などと交流しながら、多様な事務をこなしていく必要があります。その一方で、地域を盛り上げるイベントの企画や運営に関わることもあります。
私も震災復興業務の一環として、それまで分散して行われていた産業関連イベントを一つにまとめ、新たな「産業祭」を立ち上げる仕事を任されました。
最初は小規模な取組でしたが、毎年の反省を踏まえながら農協や商工会、誘致企業と繰り返し議論を重ねたことで、年々参加者が増え、町の恒例行事として定着していきました。
「今年はどんな仕掛けで盛り上げようか」と考える日々は大変でしたが、普段の書類仕事とは違ったやりがいがあり、住民の笑顔に支えられる貴重な時間でした。
観光地の魅力を引き出す公園づくり
3つ目は、観光振興に関わる業務のエピソードです。
観光振興担当は、PRやイベントの企画・運営に加え、観光地の管理や開発も重要な役割です。
私も日々観光地に足を運ぶ中で、公園前の一区画が気になり、「ここを何とか開発できないか」と考えるようになりました。しかし、その土地は権利関係が複雑で、広大な敷地ゆえに予算規模も大きく、町民の関心も高い難易度の高い案件でした。
構想から実現までには何年もの時間を要しましたが、関係者との粘り強い交渉を重ね、県知事への直接提案や議員・近隣住民との対話を経て、ようやく完成にこぎつけました。
完成した公園はいまや町の憩いの場となり、「自分の関わった仕事が町の景色を変えた」と実感できる経験になりました。
前例主義? いいえ、挑戦の余地はある
確かに、公務員の仕事は制約の多いものです。利益を生み出す仕事ではなく、前例に従う場面も少なくありません。それだけに「しんどいな」という場面にも多々出くわします。
しかしその制約をこなした上で、自分のやりたいことを町の課題解決につなげる余地が残されているのが、地方公務員という仕事です。
田舎の役場職員には、「安定した基盤の上で、自分の想いを地域づくりに活かせる」というやりがいがあるといっても過言ではありません。
田舎で暮らすための現実的な選択肢
もしあなたが「地域に根差した仕事をしたい」と思うなら、地方公務員は選択肢に入れて損はありません。数年後、あなた自身が住民と共に祭りを企画し、地元の伝統を守り、公園を整備している姿を想像してみてください。それって、あなたが田舎暮らしに求めていた生き方そのものだったりしませんか?

安定だけでなく、町を動かす力を持てる仕事。理想の生き方を実現できる仕事。
それが、移住後に選ぶ「公務員」という働き方かもしれませんね。
地方公務員の募集を探す方法
最後に、実際に「どうやって募集を探すか」を紹介します。
- 基本は各市町村の公式ホームページをチェック
- 公務員採用情報まとめサイトもおすすめ:KoumuWin
- 最近は一般の転職サイトでも自治体募集が増加
- 移住イベントに参加し、役場職員に直接聞くのもおすすめ
意外と身近なところでチャンスは見つかります。まずは情報収集から始めてみてください。
そもそも公務員って試験に受からないと・・・としり込みする方もいるかもしれませんが、最近はキャリア採用(社会人経験枠)を設ける自治体も増えています。自分のやりたいことをしっかり言葉に出来るのであれば、決して高いハードルではないはずです。




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