地域おこし協力隊の活動費はなぜ使いにくい?—自治体予算の仕組みと上手な使い方

タイトル 協力隊活動費 移住後の仕事
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はじめに:活動費に関心がある協力隊の方へ

地域おこし協力隊の予算は(令和6年度)一人あたり上限520万円。そのうち活動費は200万円です。制度が広がるにつれて金額は増えてきましたが、現場からは「使いづらい」「年度末に残ってしまう」といった声がよく聞かれます。

この記事は、活動費の実態を知りたい/上手に使いたいという協力隊の方向けに、なぜ使いにくく見えるのかをやさしく整理し、どう動けば使えるのかまで解説します。役場経験者の視点からお伝えするので、実務に直結する内容になっています。


活動費は「自由なお金」に見えて実は仕組みで縛られている

協力隊から見た活動費のイメージ

協力隊の立場からすると、活動費200万円は活動に応じて自由に使えるお金に思えます。しかし、実際に使ってみると「思ったより動かしにくい」と感じる人が多いのではないでしょうか。

その理由は、役場の「予算の作り方と使い方」にあります。

なぜ“固定せざるを得ない”のか

自治体の当初予算は前年度の秋〜冬に作られます。この時点で翌年度の協力隊の具体的な活動計画が固まっているケースは少ないのが実情です。
それでも予算は「科目」という使い道の箱に割り振っておかなければなりません。例えば、

  • 需用費(資材や消耗品)
  • 印刷製本費(チラシや報告書)
  • 委託料(外部への業務依頼)
  • 使用料及び賃借料(会場・車・PCのレンタル)

半年以上先のことを想像して、こうした枠に仮置きして固定しておくしかないのです。

つまり、不確実な未来を“固定”して決める必要がある。ここに活動費が自由に見えて自由ではない理由があります。


執行段階のすれ違い:双方とも“正しい”のに噛み合わない

役場の前提:議会で決まった枠とルールで使う

議会が決めるのは予算の枠。その後、役場はその枠とルールに従ってお金を執行します。これは硬直ではなく、住民の意思を反映した議会決定をきちんと実行する責務です。活動費も同じように、事前に決まった枠組みに沿って使われます。

協力隊の現実:活動はリアルタイムで変わる

一方で協力隊の活動は、地域の状況に応じて変わります。
「来月にイベントが決まった」「すぐに試作をしてみたい」など、柔軟に動きたい場面が多いでしょう。ところが、その柔軟さが事前に決まった予算の枠とぶつかることがあります。

実は役場も常に柔軟性を確保しようとしている

こうした「リアルタイムの変化」への対応は協力隊だけでなく、通常の役場業務でも日常的に起こります。そのため職員も、

  • 需用費など使い勝手のよい科目を厚めに計上しておく
  • 委託か請負か使用料かなど、あらかじめ整理しておく
  • 補正予算や流用のタイミングを逆算して計画を見直す
    といった工夫をしています。

この視点を知っておくと、活動費の相談の仕方も変わってきます。


どう動かす?:予算流用・専決処分・補正予算の違いと使い分け

3つの代表的な方法

  • 予算流用
    同じ部局内で科目を付け替える方法。担当課の裁量で処理できる場合が多く、最も使われやすい。
  • 専決処分
    緊急時に首長が先に執行し、後日議会に報告する例外的な手段。
  • 補正予算
    議会で改めて予算を組み替える方法。確実だが、議会日程に左右され、時間がかかります。

早めの相談こそが、活動費を活かすためのカギです

早めに相談すれば、役場担当者は「どう予算を確保するか」を考える時間を持てます。流用でいけるのか、補正が必要なのか、あらかじめ準備できるのです。
逆に、直前の相談では「流用で対応できるか否か」しか手段がなくなり、柔軟な執行は難しくなります。


活動費を有効に活用するためのポイント(協力隊がやること)

1) 着任直後:活動費の「中身」を知る

担当者に、活動費の総額と科目別の内訳を確認しましょう。どの科目はすぐ使えるのか、どの科目は手続きに時間がかかるのかを把握するだけで、動き方が変わります。

2) 年間のやりたいことを“ざっくり計画”にまとめる

四半期ごとに「いつ・何をやりたいか」「どのくらいかかりそうか」を書き出しておくことが大切です。金額は概算で十分。
担当者によっては、この計画をもとに6月頃の補正予算での組み替えを仕込んでくれる場合もあります。

3) 相談は“逆算スケジュール+具体性”

役場の発注には時間がかかります。「やりたい時期から逆算して、何か月前には相談が必要」と感覚を持ちましょう。
また、「○月にイベントをやりたい、○万円程度かかりそう」とできるだけ具体的に伝えるのがポイントです。見積や科目の判断は担当者に任せて大丈夫です。

4) 年度途中の見直しは“補正予算の時期”を意識

自治体は四半期ごとに補正予算を組むことが多いので、そのタイミングを意識して相談しましょう。
自分でも残額をメモしながら、補正予算の時期に「追加で必要なもの」を伝えると、予算を組み替えてもらいやすくなります。

5) よくあるつまずき—避けたいNG集

  • 直前に相談 → 融通が利かずチャンスを逃す
  • 予算確保前に発注 → 活動費は公金。予算が確保できていない段階での発注は絶対にNGです。
  • 私費立替で事後精算 → 役場は原則、立替清算できません。やってはいけません。
  • 目的だけ伝えて使途が不明確 → 「イベントをやりたい」では動けません。「資材に需用費、広報に印刷費」と具体的に伝える必要があります。
  • 相談の仕方がわからない → 着任時に説明がないことも多いので、早めに確認しましょう。
  • コミュニケーション不足 → 活動費は自由に見えても公金です。担当者が説明責任を果たせる形で伝えることが重要です。

まとめ:活動費は“使える資源”に変えられる

  • 編成段階では、不確実な未来を見込んで科目ごとに固定して予算を作らざるを得ません。
  • 執行段階では、議会で決まった枠とルールに従って処理するのが役場の責務です。
  • 組み替えの方法には予算流用・専決処分・補正予算があります。

つまり、早めの相談こそが、活動費を活かすためのカギです。
今日からできることは、①活動費の内訳を確認、②ざっくり年間計画を作成、③具体的に相談すること。
それだけで、活動費は「使えないお金」から、地域の挑戦を後押しする資源に変わります。


付録:相談文のミニテンプレ

件名:〇月実施予定の〇〇について(活動費の相談)
本文:
・やりたいこと/目的:〇〇(地域の△△のため)
・実施予定:〇/〇(見込み)
・場所・規模:□□
・概算費用:〜〇〇万円(発注候補先:〇社、関連資料添付可)
・相談したいこと:
 ― この内容に使える予算の妥当性
 ― 予算が確保できる見込み時期(発注可能なタイミング)
 ― 発注事務の役割分担(見積・契約・支払など)

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