へずまりゅう奈良市議の「給与明細公開」は、なぜバズった?
2025年8月末、奈良市議に初当選したへずまりゅう氏が、月額59万6,000円の議員報酬明細をXで公開しました。手取り約40万円というリアルな数字はSNSで拡散し、多くの人が「議員報酬って意外と高い」「いや、この程度なら普通のサラリーマンと変わらない」と議論を巻き起こしました。
これまで漠然と「議員=高給」と思われてきた報酬が可視化されたことで、
- 「自分もなってみたい」と考えた人
- 「迷惑系ユーチューバーでもなれるなら」と思った人
が一定数出てきたのではないでしょうか。
つまりバズった本当の理由は、数字のインパクトと“自分ごと化”のしやすさにあったといえます。
地方議員の報酬はピンキリ:年額1,000万円超から月額20万円台まで
もちろん、すべての地方議員が「高給取り」というわけではありません。
- 東洋経済のランキングによれば、年収1,000万円を超えるのは全国でも上位100自治体程度にとどまります。
- 一方で、市議でも年収500万円未満のところは珍しくなく、町村議会の平均は月額21万円程度という調査結果もあります。
- 福島県矢祭町のように、かつて「日当制(1日3万円)」を導入していた自治体もありました。
つまり、報酬の実態は地域によって大きく異なり、「専業で議員だけで食べていける」ケースは限られるのです。
地方議員は兼業が可能
地方議員は「特別職の非常勤公務員」に位置付けられ、原則として兼業が可能です。
役場と直接の取引関係が大きい場合などは制限がありますが、町村議会ではむしろ本業を持つことが一般的。
つまり「議員一本で生活する」のは都市部など一部の自治体に限られ、兼業前提で考える方が現実的といえます。
兼業が現実的な理由①:自由な時間を確保しやすい
筆者が住む町村部の例を紹介すると、定例議会は年4回×5日、臨時議会は年5~6回×1日。これに加えて地域行事等への参加がありますが、合わせても年間50日前後の拘束日数に収まります。
もちろん、地域住民との意見交換や勉強、行政チェックに時間を割く必要はありますが、日々フルタイムで拘束される仕事ではないため、自由に使える時間は比較的多いのが実情です。
「その自由時間をすべて議員活動に注ぐべきだ」という声もありますが、兼業を通じて得た経験や知見を議会活動に還元するのもまた一つの形。必ずしも“議員一本槍”が最善とは限りません。
兼業が現実的な理由②:なり手不足が移住者へのチャンスに
もう一つの理由は、なり手不足です。
地方議会では無投票当選や定員割れが相次いでおり、全国の町村議選のうち約4分の1が無投票というデータも出ています。
背景には高齢化や低報酬などがあり、「よそ者だから当選できない」というより、むしろ“外から来た新しい力に期待する”という地域も出てきているようです。
移住者にとっては、地方議員への挑戦は意外と現実的な選択肢なのです。
事例紹介:移住して地方議員になった人たち
実際に、移住を経て議員として活躍している事例もあります。
- 福島県会津美里町:横浜から移住した小柴葉月さんは、27歳で町議に当選。広報委員長として住民アンケートや議会評価を導入し、「開かれた議会づくり」に挑戦しています。(キラットふくしま)
- 長崎県五島市:東京から移住した中西大輔さんは、市議として活動しつつ、ブログで「移住者が地方政治に挑む意義」を発信。DXや若者の政治参加といった新しいテーマを議会に持ち込んでいます。(中西大輔HP)
会津美里町の小柴葉月さんのように、広報委員会主導で“開かれた議会”を設計する動きは、議会参加の心理的障壁を下げますし、中西氏のケースのように、DXや若手政治人材の育成をテーマ化し、“外からの規範”を持ち込めるのは移住者の強みです。
これらの事例は、「移住者だからこそ地域に新しい風を吹き込める」ことを示しています。
まとめ:移住×兼業議員は“現実的なキャリア”
へずまりゅう氏の給与公開は、「地方議員」という職業を自分ごととして考えるきっかけを与えました。
実態を見れば、地方議員は報酬に大きな格差があり、多くは兼業前提です。
しかし、
- 自由な時間を確保しやすい働き方
- なり手不足が移住者へのチャンスを広げていること
この2つの要因から、移住後に議員を兼業するという生き方は十分に現実的です。
さらに、会津美里町や五島市の事例が示すように、移住者は地域に新しい視点とエネルギーを持ち込めます。地域と誠実に向き合う覚悟さえあれば、地方議員は移住後のキャリアとして意外性と実効性を兼ね備えた選択肢になるでしょう。
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