1. 2025年度の新米価格はどうなる?
9月に入り、新米シーズンが本格化してきました。
今年は例年以上に「米価」に注目が集まっています。都市部の小売店では早くも5kg 7,800円という衝撃的な値札がついた新米も登場しました。これはブランド米の一例ですが、九州産コシヒカリでもすでに4,500円程度の高値で販売されているようです。
普段のスーパーで「お米はだいたい2,000円台〜3,000円台」と思っている消費者にとって、この価格帯は大きなギャップです。とくに子育て世帯など、毎日お米を食卓に並べる家庭にとっては家計を直撃する話題といえるでしょう。
今の流れを踏まえると、都市部の2025年度新米小売価格は5kgあたり4,500〜5,000円前後に収束する可能性が高いのではないでしょうか。
2. 地方移住者のお米の買い方:農家から直接購入という選択肢
地方に移住してみると、都会で当たり前だった「スーパーや小売店で買う」という以外の選択肢が増えることに驚かされます。大きく分けると、自家生産、親からの仕送り、小売店購入、そして農家から直接購入の4つです。
この中でも移住者にとって注目すべきは「農家から直接購入」。ただし、決まったルートが確立しているわけではなく、地域の中で信頼関係を築けた農家との間で成立する関係というのが実態です。農家側も、顔の見える相手に直接販売することは喜びになるため、地域コミュニティの中で自然に成り立つ関係性と言えるかもしれません。
ある程度、規模の大きな農家でないと難しいとは思いますが、専業米農家と知り合う機会があれば、「直接売ってもらうこと出来ますか?」と聞いてみると良いでしょう。この直接購入、価格面でのメリットは勿論、品質面でも大きなメリットがある方法です。次にこの点を詳しく解説してみたいと思います。
3. 価格面での可能性:概算金をベースにした購入
一つ目のという価格面のメリットとは、農家との関係性次第では「JAに出すのと同じくらいの価格で売ってもらう」ことも十分可能だということです。
一般に米農家は、集荷業者に販売をして代金を受け取ります。この集荷業者の最も大きな団体がJAです。農家がJAにお米を出荷するときには、その年の「概算金」という基準価格が示されます。これは、農家に早めに代金を引き渡すために支払う概算払い金の水準で、最終的な小売価格にも影響する指標です。
農家としてみれば、この「概算金」が米売却代金の目安になりますので、直接購入をする場合には、この「概算金」水準が、売値の参考水準になるわけです。(あくまで参考であり、販売手数料や保管料など必要経費が上乗せされることは十分に考えられます。)
この概算金ですが、日本農業新聞(2025年9月2日時点)によれば、今年の概算払い金は玄米60kgあたり28,000〜30,000円と昨年比で6~8割程度高くなっているそうです。しかしながら、それでも精米換算した価格では5kgあたり約2,800円です。
都市部で5kgあたり4,500〜5,000円が見込まれるのに対し、農家直売であれば1袋あたり1,500円以上安くなる可能性があります。年間を通して消費量が多い家庭ほど、この差は家計にとって大きな意味を持ちます。
4. 年間支出シミュレーション:消費量の変化もあわせて考える
価格差を実感するには、実際の年間支出に落とし込むのがわかりやすいでしょう。
筆者の家庭(夫婦+子ども3人)を例にすると、子どもが小さい頃は年間120〜150kgで足りましたが、成長とともに食べ盛りとなり、今では年間240kgが必要です。
これを金額に換算すると、
- 移住当初(玄米60kg=13,000円時代):年間約32,500円
- 2025年度(玄米60kg=30,000円予想):年間約120,000円
単純計算で4倍近くの支出増となっていますので、移住初期に比べるとさすがに負担感は増えてきました。しかしながら、月当たり10,000円程度と考えると、決して高すぎるわけではありません。むしろ、当時の13,000円は安すぎて農家の経営が成り立たない水準でしたので、今後は農家が安心して作り続けられる価格に落ち着くことが望まれます。
支出水準は家庭によって異なると思いますが、このあたりの金額感が、移住後に期待できる「お米事情」の水準と考えていただくと良いかもしれません。
5. 品質面でのメリット:都会の小売店では得られない体験
価格に加えて、農家直売のお米には品質面でのメリットもあります。どちらかというと、米の品質を楽しめる要素というイメージですが、以下のような点をお伝えしておきたいです。
- 精米したての新鮮さ:玄米で購入し、必要な分だけ精米することで、炊き上がりの香りと甘みが際立ちます。都市部の小売店で買う精米済みのお米では味わえない体験です。
- 保存環境の違い:農家は低温倉庫で玄米を保管していることが多く、時間が経っても品質を維持できます。流通や店頭で長期間置かれたお米とは鮮度が違います。
- 精米歩合を選べる楽しみ:白米だけでなく、七分づきや玄米を選べるのは直売ならでは。健康志向の家庭にとっては、これも大きな魅力です。
こうした「味わいの違い」は実際に食卓にのせてみるとよくわかります。価格だけでは測れない、暮らしの質を高める要素としてのお米の価値が、地方暮らしにはあります。
まとめ:価格の高騰をきっかけに、お米の楽しみ方を見直す
2025年度の新米は都市部で高値が続く見通しです。しかし地方では、農家直売ルートを通じて価格的なメリットを得るだけでなく、精米したての贅沢や保存性、食べ方の幅といった価値を同時に享受できます。
お米の価格高騰は確かに家計にとって不安材料ですが、視点を変えれば「お米のある暮らしを見直すきっかけ」にもなり得ます。単なる主食ではなく、産地に近いからこそ楽しめる豊かな食体験──それが地方移住で得られるもう一つの魅力です。
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